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2008.08.14 Thursday

天橋立から伊根へ

 今日は天橋立から、丹後半島東部の伊根(いね)への道をご紹介しましょう。

 天橋立の砂嘴を貫く松並木の道は、自動車の通行が禁止されていますから、そこでは散策やサイクリングを、安心して楽しむことができます。
 一方、バスや自動車で、天橋立の南端・文珠(もんじゅ)から北端・府中(ふちゅう)へ行かれるには、阿蘇海に沿って、西へ回っていただかなくてはなりません。バスで行かれるなら、丹後海陸交通の路線バスが、府中を経て伊根や、その奥の経ヶ岬(きょうがみさき)まで運行されています。

 道路は宮津市から一旦は与謝野町へ入り、再び宮津市となります。民家や田畑の間から、阿蘇海を挟んで天橋立の松林が見えます。阿蘇海北岸には「丹後郷土資料館」があり、丹後の風土を知るにはお勧めの施設だと思います。
 更に進まれると、天橋立の北端へ到着します。このあたりを「府中」というのは、かつて丹後国府があったと言われているからです。府中には、天橋立の股のぞきで有名な傘松公園や、丹後一の宮の元伊勢「(この)神社」があります。
 私は丹後へ来るまでは、失礼ながら籠神社がそんなにすごい神社とは知りませんでした。丹後随一の神社とは聞いていたのですが、日本古代史の通説を覆すかもしれない、最古の家系図(海部氏系図:国宝)が伝わっています。
 当地へ来て、「古代丹後王国」関係の書物を読んでいると、初期ヤマト王権を主導したのは、丹後の勢力ではなかったかとも思えてきます。
元伊勢籠神社

 府中からは宮津湾に沿って、国道178号線を北上します。進むほどに、右手に海が広がってきます。好天に恵まれた朝、陽光に煌めく青い海を見ると、心が浮き立ちますね。
朝日に煌く海

 自動車で天橋立から府中までは15分、府中から伊根までは25分というところです。
 国道の標識に従って、伊根の町へ入ります。伊根は舟屋(ふなや)で有名ですが、海から直接、船を民家の1階へ収容できるようにした構造で、現在約230軒の舟屋があると言われています。
伊根の舟屋

 私の経験では、舟屋を間近に見るには、伊根湾に沿った旧道を進まれるか、湾内巡りの遊覧船に乗られるのがよいと思います。また、伊根湾全体を眺めるには、高台にある道の駅「舟屋の里伊根」(舟屋の里公園)からがよいと思います。
伊根湾を望む

 伊根からはお時間があれば、そのまま丹後半島を北上され、蒲入(かまにゅう)漁港から経ヶ岬まで行かれることをお勧めします。
 更には西へ、日本棚田百選に名を連ねる袖志(そでし)、丹後松島や屏風岩など、美しい海浜風景を眺めながら旅を続けられるならば、丹後の夏を存分に満喫していただけることでしょう。
 伊根から先については、稿を改めてご紹介します。

Author : 天橋立ホテル | 夏の丹後 |

2008.08.12 Tuesday

天橋立を歩く

 前回は、様々な場所から見た天橋立をご紹介しました。
 今日は、天橋立ホテルから智恵の文殊菩薩で有名な「智恩寺」(ちおんじ)、船が通るとき橋が回転する「廻旋橋」(かいせんきょう)を経て、天橋立の砂嘴の「松並木の道」をご案内します。
 天橋立の全長は3.6kmですが、そのうち智恩寺近くの廻旋橋から北端の府中までは2.5kmですから、これなら40分程度で歩くことができます。
 天橋立は遠くから眺めると、海上に砂嘴が延びるすばらしい景観です。しかしそれだけに限らず、お時間があれば端から端まで歩いてみられるのも、非常におもしろいご経験になろうかと思います。

 当ホテルは内海の阿蘇海に臨んでおり、お部屋から天橋立の眺望を存分にお楽しみいただけます。更に、その風景の中へ散策に出かけられるにも、極めて便利です。
 当ホテルの裏手から阿蘇海に沿って進んでいただきますと、智恩寺がすぐ近くにあります。寺院そのものは平安時代創建と伝わっており、室町時代に建立された多宝塔、江戸時代初期に改修された本堂(文殊堂)が目を引きます。山門は江戸時代中期に再建され、別名を「黄金閣」(おうごんかく)という堂々たる楼門です。
智恩寺山門

 智恩寺の北東には、天橋立の南北を結んで阿蘇海を行く、観光船の船着場があります。観光船は、片道12分ほどで天橋立の両端を航行します。
 船着場を横に見て、智恩寺山門をくぐり、門前に並ぶ土産物などの店の間を通ると、左に「廻旋橋」が架かっています。その下の水路を船が近づいてきたら、橋桁が回転して船を通すのです。
廻旋橋

 橋を渡れば、天橋立の「松並木の道」です。
 天橋立には数千本の松の木が並び、中には固有の名を持つ名松もあります。また「磯清水」や「岩見重太郎仇討の場」などの名所旧跡も点在します。天橋立地区のホテル旅館には、散策マップもご用意しておりますので、お気軽にお出かけください。
 散策の道は、次の写真のように、思いのほか幅が広いのですよ。
天橋立の松並木

 松並木の間からは随時、阿蘇海や宮津湾を垣間見ることができます。散策の途中で海辺へ立ち寄ってみられるのも、一興でしょう。
宮津湾の浜辺

 散策を終えれば、そのまま付近を観光されるのもよし、或いは再び歩いたり観光船に乗ったりして、出発点へ戻られるのもよし、思いのまま天橋立を楽しんでいただけるかと存じます。

Author : 天橋立ホテル | 夏の丹後 |

2008.08.09 Saturday

天橋立−様々な景観

 最近は丹後半島北岸など、足を延ばして見ていただく内容が多かったので、今回は近接する天橋立を、しっかりご紹介したいと思います。

 天橋立は「日本三景」の一つと言われています。日本三景という言葉ができたのは江戸時代初期とされていますが、そもそも天橋立という地名は更に古く、平安時代中期に和泉式部(いずみしきぶ)の娘・小式部内侍(こしきぶのないし)が詠んだ、次の和歌があまりにも有名です。

 「大江山 いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立」(小倉百人一首)

 歌人として名高い母・和泉式部が、夫・藤原保昌(ふじわらのやすまさ)の任地である丹後へ下っていたとき、都にいた娘・小式部内侍は、歌合せの会で「丹後のお母さんに代作を頼む使者は出しましたか?」という、意地悪い質問を受けました。彼女の歌は、実は母が密かに作っているのではないかと、人々は噂をしていたのですね。
 上記の歌は、その質問に答えて詠んだものとされ、「大江山や生野(福知山近郊の地名?)を越えていく道のりは遠いので、まだ母のいる天橋立の地を踏んだこともありませんし、母からの手紙もまだ見ていません」という意味だそうです。「行く野=生野」「文=踏み」の掛詞や当意即妙の応答が、一挙に彼女の評判を高めたと伝えられています。

 個人的な感想ですが、私は天橋立に赴任する前、休日にはよく京都を探索していました。今思い出してみると、和泉式部は京都市街や貴船に足跡を残し、武勇で知られる藤原保昌は、保昌山(ほうしょうやま)という祇園祭の山に名を留めています。京都から丹後へ赴任した彼らは、私自身に重なる点もあり、何か他人でないような気がしてきました。

 さて、天橋立は見る場所によって、様々に姿を変えます。まず股のぞきで有名な、北側の小高い「傘松(かさまつ)公園」からの風景です。その形から「斜め一文字」とも言われます。
斜め一文字

 次は南側の「天橋立ビューランド」からの眺めで、「飛龍観」(ひりゅうかん)と呼ばれます。そう言えば、龍が身をくねらせて天へ昇るようですね。
飛龍観

 もう一つ、西側の「大内(おおち)峠」からの眺めです。天橋立が少々遠いながら、横に細長く一文字に見えるので、「一字観」(いちじかん)と称します。
一字観

 他にも、東側の獅子崎(しいざき)稲荷神社からの眺めが、雪舟の絵の視点に似ているところから「雪舟観」(せっしゅうかん)と名付けられ、また宮津市街の西−滝上(たきがみ)展望台からの「弓ケ観」(ゆみがかん)も名所とされています。
 但し、雪舟観は私が見た限りでは、樹木が茂って天橋立全体が見通しにくい状態でした。弓ケ観にはまだ行ったことがありませんので、他日を期したいと思います。

 最後に、我が天橋立ホテルの客室からの眺望をご紹介します。手前の内海・阿蘇海(あそかい)を隔てて、なかなか良い眺めでしょう?
天橋立ホテルから

Author : 天橋立ホテル | 夏の丹後 |

2008.08.08 Friday

丹後−夏の海 〈3〉

 京都府北部の舞鶴市・宮津市・与謝野町・伊根町・京丹後市を、「丹後地方」と一般に呼んでいます。この地域は、古の律令制下では「丹後国」(たんごのくに)でした。
 天橋立は、この丹後地方のほぼ中央にあります。ここから自動車で出発しますと、域内の至るところへ、概ね1時間半以内で行くことができます。
 私は時間を見つけては、丹後地方のあちらこちらを巡っています。今日は、天橋立の北にある丹後半島の典型的な海浜風景を、幾つかご紹介します。

 丹後半島は日本海に突き出した大きな半島で、まず写真のような荒々しい磯浜があります。
砂方海岸

 また、海岸線のすぐ傍まで耕されている田畑もあります。稲の緑は美しい色ですね。
海辺の田畑

 そして穏やかな砂浜が、青い海や空を背景に目の前に広がります。以前にもブログで触れましたが、丹後半島の砂浜の殆どは、白い砂が続いています。これが海の色を明るくコバルトブルーに輝かせる、大きな要素だと思います。
琴引浜

 白砂の浜辺に佇めば、こんなに澄んだ海水が寄せてくるのです。近畿地方の北にこのような海があるのを、私も丹後へ来て改めて知りました。
八丁浜

 他にも、入江に隠れるように漁港が点在し、それを囲むように集落が営まれています。
 観光地を巡るだけでなく、ありのままの丹後を見て回れば、それだけでゆったりとした気持ちになれますね。それが丹後の魅力でしょうか。

Author : 天橋立ホテル | 夏の丹後 |

2008.08.04 Monday

丹後−夏の海 〈2〉

 8月になり暑さが続くと、日本海沿岸の丹後地方では、空が晴れわたり、海が青く輝く日が多くなります。
 丹後へ来て、海の青さに驚いた私は、なぜこんなに海が鮮やかな色なのか考えました。理由の一つは海水が澄み、砂が白い浜辺が多いからでしょうか。もう一つは海が北にあり、太陽を背に海を見るからでしょうか。誤っているかもしれませんが、自分ではこう考えて納得しています。

 海に囲まれた日本ですが、多くの浜辺には工場やら人工物があり、自然に身をゆだねてゆったりと海を眺めるのは、特に都会人には難しいと思います。しかし、丹後の海岸には思う存分、自然があります。国道178号線を走っていると、このような風景を眺めながらドライブできることが、すごく贅沢な気がします。
 私は丹後を、「初めてでも何か懐かしい、緩やかな時間が流れる、心のふるさと」と思っています。四季折々の豊かな表情を、都会生活を送る方々にも、ぜひ見ていただきたいと願っています。
 今日の写真は、丹後半島北岸の海水浴場です。たとえ海水浴をされなくても、このような美しい色の海を眺めるだけで、真夏の旅を充分に楽しめることでしょう。

琴引浜(掛津海水浴場)

八丁浜(浅茂川海水浴場)

Author : 天橋立ホテル | 夏の丹後 |