前回お伝えした「ちりめん街道」の中心に、「旧尾藤(びとう)家住宅」はあります。尾藤氏は江戸時代には大庄屋を務め、当主は代々「庄蔵」を名乗るようになりました。
第10代庄蔵は明治時代、生糸ちりめん業の傍ら、丹後銀行頭取を務めました。また第11代庄蔵は大正から昭和にかけて、加悦鉄道社長や加悦町長も務めております。
母屋は江戸時代末期に建てられ、白壁と虫籠窓に彩られています。その後、明治から昭和初年にかけ、蔵や座敷、洋館の増改築が相次ぎました。特に、昭和3(1928)年に建てられた洋館は、第11代庄蔵の強い思い入れがあったと言います。
住宅内の展示は、季節ごとに一部入れ替えられ、四季の変化に応じて楽しむことができます。今の時季は、同家に伝わった雛人形が、玄関近くの部屋に飾られております。
最初の写真は、第11代庄蔵の妻・つるの雛人形と、彼女の着物です。
つるは兵庫県の豊岡で生まれ、明治38年に第11代庄蔵のもとへ嫁ぎました。そして昭和51年に90歳で亡くなるまで、ずっと加悦の尾藤家を守ってきたそうです。
次の写真は、彼らの長女・千津の雛人形です。
千津は大正12年、16歳の若さで病没しました。ですから、この雛人形が飾られた期間は、随分短かったことでしょう。
雛人形を見せていただいた後、住宅の内部を見学しました。居間には、当時のラジオや電話機などが置かれています。
奥座敷を抜けて、階段を上がってみました。2階には洋風の書斎と応接室があります。これが第11代庄蔵の念願であった洋館の室内なのですね。
今から80年も前、丹後にこのような洋室が完成していたことに驚きました。また当時の加悦谷の繁栄が、瞼に浮かぶ思いがしました。
2009.02.25 Wednesday
旧尾藤家の雛人形