数日前から急に寒くなりました。丹後でも雪が舞い、ようやく本来の冬に戻ったような気がします。
今日は前回に引き続き、丹後の旧家を訪ねます。ご案内するのは、与謝野町加悦(かや)の情緒ある町並みです。このあたりは「加悦重要伝統的建造物群保存地区」に指定され、一般に「ちりめん街道」と呼ばれております。
「縮緬」(ちりめん)は生糸を原料とする白生地の絹織物で、京都・加賀の友禅や沖縄の紅型(びんがた)にも使われるなど、着物の素材の多くが縮緬でできています。当地の「丹後ちりめん」は、全国の白生地生産量の6割以上を占めるそうです。
丹後ちりめんの特徴は「シボ」と、肌に馴染むしなやかな風合いです。「シボ」とは、糸に機械で強く撚りをかけて、予め作った生地の凹凸のことで、着るときに皺が生じるのを防ぎます。
古来、絹織物の産地であった丹後地方で縮緬が作られ始めたのは、江戸時代中期(18世紀前半)に遡ります。京都・西陣で修業した職人が、縮緬の技術を持ち帰り、峰山と加悦でほぼ同時期に織り始めたのです。彼らは地元の人々に製法を惜しみなく伝えましたし、丹後は工程に欠かせない良質な水に恵まれていましたので、地域の新しい基幹産業として育っていきました。
縮緬産業は昭和30年代に最盛期を迎え、岩滝・野田川・加悦・峰山・網野などの生産地は、好況に沸いたと言います。今では往時の隆盛はありませんが、時代のニーズに合った製品作りが行われており、これらの地域を歩きますと、どこからともなく機織りの音が聞こえてきます。
次の写真は、ちりめん街道の中心部にある「旧尾藤(びとう)家住宅」です。同家は江戸時代後期には、生糸ちりめん問屋として活躍しました。
付近には、明治・大正・昭和にかけて建てられた商家・工場、洋風の医院、酒蔵、旅館などが軒を連ね、ノスタルジックな町並みが残っています。
また街道沿いには、江戸時代に創建された寺院も点在しています。下の写真は、「実相寺」(じっそうじ:日蓮宗)、そして「宝巌寺」(ほうがんじ:浄土宗)です。
ともに高い石垣の上に建つ堂々たる寺院で、下から見上げれば、形の良い山門が人々を迎えてくれます。
これらの寺院は、雰囲気が周囲と全く異ならず、街道の落ち着いた家並みの中に、自然に溶け込んで存在しています。
街道の南端に近い場所に「杉本(すぎもと)家住宅」があり、家の前に「縮緬発祥之地」の碑が立っていました。
次回は、旧尾藤家住宅の内部の様子、飾られている雛人形などをご紹介します。
2009.02.19 Thursday
ちりめん街道