近年、都市近郊では宅地化が進み、まとまった田野がなかなか見られなくなりました。しかし丹後地方では、今も広大な田畑が耕されています。
春から夏へ季節が変わる頃、田には水が張られ、濃さを増した山々の影を映します。最初の写真は、天橋立の南西−「加悦谷」(かやだに:与謝野町)の田園風景です。
奥に見えるのは酒呑童子伝説の大江山(おおえやま)連峰で、こちら側は西麓に当たります。
デジカメを持ったまま、左(北)を向いて撮ったのが、次の写真です。
空を映した水からは、小さな稲が顔を覗かせていますね。遥か遠くには、丹後半島の山並みが眺められます。
この近辺にある「温江」(あつえ)という集落は、歌人・与謝野晶子の夫である鉄幹(てっかん)ゆかりの地です。
実は与謝野鉄幹自身は京都市で生まれましたが、彼の父親・礼厳(れいごん=浄土真宗の僧侶)が当地出身であり、明治初年から出身地に因んで、与謝野の姓を名乗りました。鉄幹は父の故郷である丹後を、妻・晶子を伴って幾度か訪れております。
天橋立には彼らの歌碑があります。そして温江には、与謝野礼厳の追念碑が立てられていました。
温江はご覧のように、水田の懐かしい風景が広がる里です。初めの2枚の写真を撮ってから半月を経て再訪しましたので、草木の色がずっと濃くなっています。
私には、日本の原風景のように思えました。
2009.05.24 Sunday
加悦谷の晩春