RSS

2009.03.27 Friday

依遅ヶ尾山に登る

 これまでのブログで、私が丹後へ来て以来、三つの山に登ったことをお伝えしました。
 最初に登ったのは08年4月、羽衣天女伝説の「磯砂山」(いさなごさん 661m)。次は7月、酒呑童子伝説の「大江山」(最高峰・千丈ヶ嶽 せんじょうがたけ 833m)。そして11月、山椒大夫伝説の「由良ヶ岳」(ゆらがたけ 640m)でした。
  
 この3月、雪の心配もなくなって、早春の登山をしてみたくなりました。ある休日に登ろうと選んだのが、丹後半島北部に聳える「依遅ヶ尾山」(いちがおさん 540m)です。変わった名前ですが、丹後一の山が語源との説があります。
 この山は、西方の海岸から遠望すると、一際目立つ稜線を持っています。私は稜線の形が、以前よく登った京都の愛宕山に似ていると思っていました。
海からの依遅ヶ尾山
 沖を行く船舶から眺めますと、この山はその独特の形状から、位置がわかる良い目印となっていることでしょう。

 依遅ヶ尾山へ登るには、間人(たいざ)近くで日本海に注ぐ竹野川(たけのがわ)を遡り、南麓から山頂を目指すことになります。
 川沿いの道から眺めた山容が、次の写真です。菜の花が春を告げていますね。
竹野川からの依遅ヶ尾山
 
 登山口には駐車場があり、いよいよ登り始めます。
 幅が広く緩やかな山道を歩きますと、数分のところに古代住居のような小屋が建ち、「ありが棟」と書かれています。「ありがとう」と読むのでしょうね。
ありが棟
 そこからは細い山道を登ります。南側には、遥か先まで山並みが続いています。初めは木立の中を歩くのですが、斜面を登るに従って、熊笹や低木が多くなります。
 早春の今は、木々はまだ冬枯れのままで、遠くまで見通すことができました。山頂が近づくにつれ、勾配が緩やかになります。途中で、猿の群れを見かけました。

 登山口を出発してから50分ほどで、山頂に到着しました。
 この山は、古くは巫女を養成する霊山と言われ、現在も山頂には、修験道の祖・役行者(えんのぎょうじゃ)の石像が祀られています。
依遅ヶ尾山頂
 山頂からは360度の展望が楽しめます。北方には青く広大な日本海、西方には間人や網野の町並みが見下ろせます。また目を南方に転ずれば、碇(いかり)高原牧場の草原が見えてきます。

 山頂は広く、東へ進んでみますと、眼下に丹後半島最北端の経ヶ岬(きょうがみさき)を眺めることができました。
経ヶ岬を望む
 山頂に半時間ばかりいて、春の気配を楽しんだ後、下山しました。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.03.21 Saturday

舞鶴自然文化園の椿

 丹後でも例年より早く、桜が開化しそうです。
 今日はそれに先立ち、大浦半島中部にある「舞鶴自然文化園」の椿(つばき)をご紹介します。

 この自然文化園については、昨年9月4日のブログでも簡単にご案内しました。広大な敷地のうち、15ヘクタール以上が開放されており、園内の歩道を散策しながら、四季折々の花をゆったりと観賞することができます。
園内の草原

 3月中旬から1500種3万本の椿園が開かれ、なんと入場無料で楽しめるのです。園内を散策しながら撮った写真をご覧ください。
園内散策1

園内散策2

 特に4月5日までの間は、椿展「ツバキ原種の世界」が開催されて、屋内展示場でも鉢植えや切り花が見られ、人気のある椿の苗木も販売されております。
屋内展示場

 園内散策路からは舞鶴湾が、時折木々の合間に見えてきます。
 散策していますと、梅も紅白の花を咲かせていました。
園内の梅花

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.03.15 Sunday

早春の丹後半島

 一昨日から昨日にかけて、丹後でも強い風雨が吹き荒れました。気温が下がり、昨日午後には霙(みぞれ)まで降り出して、冬に逆戻りかと思いました。
 しかし今朝には好天となり、日中は気温がぐんぐん上がり、日差しもいつの間にか強くなって、春を感じさせています。
 今日は、波が穏やかで青さが増した、早春の丹後の海をご案内します。
 
 以前、初冬の丹後半島北岸を訪れたとき、波が高くなった「丹後松島」をご紹介したことがあります(昨年12月15日)。厳冬を経て再び春が巡り、次の写真のような穏やかな表情を見せるようになりました。
早春の丹後松島

 自動車を西へ向け、これまでにもよくご紹介した「立岩」(たていわ)まで来てみますと、こちらも荒々しい風濤が想像できないような穏やかさです。
早春の立岩
 日差しはすっかり春ですね。私が立っている叢の色は、まだ冬のままですが。

 間人(たいざ)西方の磯浜では、逆光の中、眼下に広がる海面の、銀色に輝く様子が印象的でした。
逆光の砂方海岸
 春が来て、正に溢れる光の中にいる感じがします。

 海岸線に沿って、更に西へ走ります。網野の八丁浜の西端に、「嶋児(しまこ)神社」という小さな祠が建っており、傍らに釣竿を持って亀に乗る浦島太郎の石像がありました。
嶋児神社の浦島太郎像
 丹後半島東岸の本庄浜の近くに「浦嶋神社」がありますが、網野の地にも浦島伝説が伝わっているのですね。
 このような伝説の身近な土地で過ごしますと、まるで古代に実際に起きた話のように思えてきました。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.03.09 Monday

早春の栗田半島

 今年は暖冬で、日本海沿岸でも積雪量は例年を大きく下回りました。昨年は3月になっても山地には残雪がありましたが、今年は全くありません。
 桜が開花するまでの間、景色は枯野のままで、梅のほか華やかな色彩も見当たりません。ブログで写真をご紹介する身には、題材を探すのが難しい昨今です。
 今日は、丹後地方を観光する中で比較的訪れることの少ない、「栗田(くんだ)半島」を巡ってみます。

 この半島は、宮津湾の東方に突き出しており、付け根を国道178号線が横切り、短時間で通り過ぎるので、つい見逃してしまう地域かもしれません。
 宮津市街が尽きるところで国道を離れ、湾岸に沿って自動車を走らせますと、栗田半島の西岸を進むことになります。宮津湾にせり出した小さな岬を「獅子崎」(しいざき)といい、天橋立に祀られる文殊菩薩が乗る獅子に因む地名と思われます。
 次の写真は、その付近から眺めた宮津湾で、対岸に天橋立の砂嘴が横一文字に見えています。
獅子崎から
 岬の高台には稲荷神社が建ち、4月には三つ葉躑躅(つつじ)が斜面を覆います。また、高台からの眺めを「雪舟観」(せっしゅうかん)といい、雪舟の描いた国宝「天橋立図」の視点に一番近いとされております。但し、今では木々が生長し、ところどころで視界を遮っているのが残念です。

 湾岸の道路を北上します。半島の先端近くまで行って、田井(たい)という集落の手前から山道へ入りますと、東側へ抜けることができるのですが、道が随分細いのです。そこで一般には、途中の獅子(ちし)という集落の三叉路を右折し、半島を横断されることをお勧めします。
 栗田半島の東側では、栗田湾が弓なりの海岸線を形成しています。そちらの岬近くに、関西電力宮津エネルギー研究所の大きな施設が見え、一角に「丹後魚っ知館」(たんごうおっちかん)が設けられています。
魚っ知館

 館内には水族館があり(有料)、大水槽では多種多様の魚類や海亀が泳ぎ回る様子を、間近で観察することができます。
大水槽
 また別の水槽では、丹後周辺に生息する魚や、珍しい魚介類なども展示され、楽しい時間を過ごせます。

 更に館外には、ペンギンやアザラシのコーナーもあり、愛らしい仕草を見ることができます。
ペンギン
 こちらは、水族館としての規模は決して大きくありませんが、海に親しむのに良い施設だと思いました。

 魚っ知館から道路を少し戻り、半島を北上しますと、静かな砂浜に出合います。ここは「越浜」(おっぱま)といい、夏には海水浴場として賑わいます。
越浜
 砂浜の西端に、島陰(しまかげ)という集落があります。その名のとおり、半島の先端近くに、隠れるように営まれている集落で、田井からの細い山道もここへ下りてきます。
 今回は、早春の栗田半島をご案内しました。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.03.03 Tuesday

豪商稲葉本家

 江戸時代の丹後には、宮津7万石(本庄氏)、田辺(舞鶴)3万5千石(牧野氏)、峰山1万3千石(京極氏)の三つの藩がありました。また幕府直轄領として、久美浜(くみはま)に代官所が置かれていました。
 久美浜は、天橋立からは国道312号線を西北西の方向に、自動車で約1時間走ったところにあり、往時を偲ばせる古い町並みが今も残っています。その中心部に、今日ご案内する「豪商稲葉(いなば)本家」が建っております。
 稲葉氏は、美濃の稲葉一族(織田信長家臣)の末裔と言われ、江戸時代には糀(こうじ)製造や廻船業を営み、近隣諸藩の金融を一手に引き受ける豪商でした。
豪商稲葉本家

 稲葉家の母屋は5年の歳月をかけて、明治23(1890)年に完成しました。母屋の玄関を入りますと、いきなり吹き抜けの大空間が広がり、圧倒されます。
母屋玄関間

 1階には座敷や書斎があり、更に奥へ廊下を進めば、数寄屋風の書院座敷に行き着きます。これは江戸時代に建てられた、「吟松舎」(ぎんしょうしゃ)と呼ばれる建物です。
 奥座敷や茶室の更に向こうには、緑が美しく広い庭園が造られていました。
吟松舎庭園

 母屋へ戻り、2階へ上がってみました。窓が開けられており、先ほど見せていただいた吟松舎の甍が、銀色に輝いていました。
二階からの甍

 敷地内には幾つかの蔵があり、現在は資料館として、貴重な文物が展示されています。
 中庭を経て、玄関の反対側にある「雛御門」(ひなごもん)から外へ出てみました。卯建(うだつ)のある格調高い門構えでした。
雛御門

Author : 天橋立ホテル | 冬の丹後 |