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2009.04.26 Sunday

磯砂山と天女伝説

 これまでに幾度か、私が登った丹後の山々をこのブログでご紹介してきましたが、最初に登った「磯砂山」(いさなごさん 661m)を、まだ取り上げておりませんでした。
 写真に春の花が写っているのが、その理由ですから、登山後1年を経て同じ季節が巡ってきた今、改めてご案内させていただきます。

 磯砂山は京丹後市の南部に聳える、羽衣天女が舞い降りたという伝説を持つ山です。
 全国各地にこの伝説が残されていますが、「丹後国風土記」には日本最古と言われる羽衣伝説が記されております。磯砂山の池で水浴びをする天女の羽衣を老夫婦が持ち帰り、天女は老夫婦の娘となって、酒造りで里を豊かにしたという物語です。
 また羽衣を持ち帰ったのが狩人で、天女を妻にしたものの、やがて天女は隠された羽衣を見つけ、天へ帰っていったという、別系統の物語も残されております。

 磯砂山に登るには、西麓を流れる鱒留川(ますどめがわ)に沿って遡り、南側の登山道を行くのが一般的です。
 車道の終点には駐車場もあり、そこへ自動車を置いて、登山道へ足を踏み入れます。始点に立つ標識によると、山頂までは1010段あるようです。
磯砂登山道
 登山道は思いのほか整備され、頂上までの残りの段数を示す標識が、随所に設けられていました。

 途中で、天女が水浴びしたとの伝説が残る池にも寄ってみました。但し池というより、窪地の水溜りという感じです。
 歩き始めてから、約40分で山頂に到着しました。
磯砂山頂
 山頂は広々とし、四方に展望が開けています。

 また、山頂には天女伝説のモニュメントが置かれていました。
天女の碑
 その傍らには、水仙の花が咲いています。
 
 山頂に半時間ばかりいて、下山を始めました。
下山道から
 登るときには気づかなかった周囲の様子が見えてきました。山の木々もようやく萌えてきたようです。

 下山して、鱒留川に沿って自動車を走らせ、北麓から振り返りますと、八重桜が咲く川岸の向こうに、今しがた登った磯砂山の姿が見えていました。
磯砂山と鱒留川

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.04.19 Sunday

丹後の躑躅

 桜に続いては、丹後の躑躅(つつじ)をご案内します。
 今日取り上げますのは、大輪の花を咲かせる大紫(おおむらさき=平戸ツツジの一種)ではなく、ヤマツツジや三つ葉ツツジです。

 与謝野町北部、京都府道2号線が兵庫県境の岩屋(いわや)峠へ向かう途中に、「雲岩(うんがん)公園」というヤマツツジの名所があります。
 鎌倉時代に寺院(雲厳寺)が開かれましたが、戦国の動乱に巻き込まれました。近世に再興された後、現在は公園となり、4月には5000本のヤマツツジが斜面を覆います。
雲岩公園
 標高130mの小高い尾根には巨岩が点在し、写真はそこから北東を眺めたものです。

 また、宮津湾東岸の高台に、「獅子崎(しいざき)稲荷神社」が鎮座しています。参道脇の斜面には1000本の三つ葉ツツジが群生し、毎年この時季、一斉に赤紫色の花を咲かせます。
獅子崎稲荷神社
 因みに、神社の建つ高台からの眺めは「雪舟観」(せっしゅうかん)と呼ばれ、雪舟の描いた国宝「天橋立図」の視点に一番近いとされております。

 三つ葉ツツジと言えば、久美浜の「如意寺」(にょいじ)も欠かせません。
 こちらは関西花の寺第7番札所で、四季折々の花を楽しむことができます。境内の遊歩道を歩きますと、三つ葉ツツジを間近で観賞することができます。
久美浜の如意寺
 花の向こうに、久美浜湾が見えていますね。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.04.12 Sunday

丹後の桜 〈2〉

 今日は天橋立・宮津を離れて、丹後半島、そして由良から舞鶴にかけての、桜の名所をご案内します。

 舟屋で有名な伊根から更に北へ進みますと、蒲入(かまにゅう)という漁港があります。
 丹後半島を巡る国道178号線は、漁港が見えてくるあたりで、道路の海側に桜並木が続きます。振り返れば、桜の合間から丹後半島の断崖が眺められました。
桜咲く蒲入

 丹後半島の先端・経ヶ岬(きょうがみさき)から、半島北岸を西進します。斜面に棚田が広がる袖志(そでし)を経て、ほどなく丹後松島(たんごまつしま)に着きました。
陽春の丹後松島
 陽春の日本海は波が穏やかです。海と桜は、実によく似合いますね。

 今度は、宮津から東へ向かい、北近畿タンゴ鉄道の丹後由良駅前まで来てみました。駅前の道の両側には、等間隔に植えられた桜の古木が、見事な花を咲かせています。
丹後由良駅前
 このような桜並木が京阪神になどあれば、見物客が殺到するでしょうに、当地では休日の昼間にも拘らず、ご覧のように、人影を殆ど見かけません。
 満開の桜を、正に独り占めでした。

 由良川を渡り、舞鶴市街へ入ります。舞鶴湾の西岸に、「吉田瑠璃寺」(よしだるりじ)という仏寺があり、そこの枝垂桜が立派で美しいのです。
吉田瑠璃寺
 戦国武将・細川幽斎が京都の吉田から桜を移し、以後この地が吉田と呼ばれるようになったそうです。

 丹後各地では、他にも美しい桜を多く見かけますが、都会と異なり、雑踏に揉まれて見物するということは殆どありません。
 暖かい日差しの中で、散りゆく桜花を静かに見ておりますと、日本の春の情緒とはこういうものかという思いがします。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.04.05 Sunday

丹後の桜 〈1〉

 私はこのたび異動により、2年間過ごした天橋立を去ることになりました。
 しかし、この間に丹後各地を探訪して接した四季の表情には、実に忘れがたい情趣がありますので、当面は丹後を再訪しながら、これらをお伝えしたいと存じます。

 今回と次回は、丹後各地に咲く桜をご案内します。
 まず天橋立と、その周辺の桜です。天橋立の北側にある府中駅から、山腹の傘松公園までは、ケーブルカーで4分、リフトで6分ほどです。
 ケーブルの敷かれた斜面には、桜の花が咲き誇っていました。
ケーブルと桜

 傘松公園の展望台からは、天橋立の砂嘴が延びる様が眼下に見え、こちらでも桜が咲き始めています。
傘松公園の桜
 正に、天橋立・丹後に春が来た、という感じですね。

 宮津市街でも、滝上公園をはじめ各所で美しい桜を見かけますが、山王宮日吉(さんのうぐうひよし)神社の境内に咲く桜には、「含紅桜」(がんこうざくら)という固有名詞が付いています。江戸時代前期(17世紀後半)、当時の宮津藩主によって命名されました。
 樹種はヤマザクラで、開花後は日ごとに薄紅色へ変化していきます。宮津市の天然記念物にも指定されております。
山王宮の含紅桜

 次の写真は、宮津市北部の世屋(せや)高原の奥地に咲く一本桜です。
 上世屋の集落を過ぎ、家族旅行村付近の斜面を南東へ少し下りますと、田畑の中で孤高を保つように開花し始めています。
世屋の一本桜
 低地では花の見頃を過ぎた時分でも、標高500m近い高原では、これから満開を迎えるところでしょうか。
 斜面の先には、宮津湾や栗田(くんだ)半島が見えています。

 次回は、丹後半島や由良・舞鶴の桜を、幾つかご案内します。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |