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2009.05.10 Sunday

宮津祭

 私がよく逍遥する京都は名だたる祭礼都市で、四季を通じて殆ど毎日のように、どこかで祭礼が行われています。一方、丹後地方でも春から秋にかけて、域内各地で多くの祭やイベントが催されます。
 かつて天橋立に赴任したとき、私はその多さに驚くとともに、大いに興味が湧いてきました。今回は、数日後に迫った「宮津祭」について、ご紹介します。

 この祭は江戸時代以来、城下町・宮津で最大の祭でした。宮津旧市街は東西に大別され、東地区は「和貴宮(わきのみや)神社」、西地区は「山王宮日吉(さんのうぐう ひよし)神社」を、それぞれ氏神としております。
 5月15日の夕方、旧市街では笛や太鼓の音が鳴り響き、祭の行列が練り歩いて、気分を盛り上げます。
 旧市街は狭い範囲に民家が密集していますので、祭が行われる両神社もそんなに離れてはおりません。私もまず和貴宮へお参りし、周辺で神輿の行列を見た後、山王宮へ行ってみました。
夜の山王宮
 まもなく祭の中心となる山王宮も、今はまだ人影がまばらです。

 午後7時半を過ぎる頃、急に見物客が増えてきました。「太神楽」(だいかぐら)が始まるのです。囃子を奏でながら、天狗や獅子に扮した行列が、神社の石段を上ってきます。
 獅子は口に宝剣をくわえ、拝殿へ入っていきました。
太神楽

 続いて、町内を練り歩いた神輿が神社へ戻り、勢いよく石段を上り始めました。「神輿還御」(みこしかんぎょ)です。祀られる神様が神輿に乗って、本殿へ帰ってこられたのです。
神輿還御
 神輿が拝殿に入りますと、境内の明かりが一斉に消されます。暗闇の中、人々が神様をお送りする「オー」という声だけが響き、荘厳な雰囲気です。

 山王宮の祭が終わりました。家路に着く私が、和貴宮神社の近くを再び通りかかったとき、「浮太鼓」(うきだいこ)が勇壮な音を鳴らしながら、なお氏子の家々を回っておりました。
浮太鼓
 地元の方々が実に晴れやかな表情で、祭に参加しておられました。正に、住民に愛される伝統の祭ですね。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.05.03 Sunday

伊根の晩春

 5月になり、日ごとに日差しが強くなってきました。
 今回は、伊根から丹後半島東岸にかけて、晩春の様子をご案内します。

 高台にある道の駅「舟屋の里伊根」(舟屋の里公園)へ行かれますと、伊根湾全体を見下ろすことができます。
 この時季、湾を取り囲む山は木々の緑が明るく、盛夏のような濃い色にはなっておりません。なんとも柔らかな表情を見せています。
晩春の伊根湾

 園内では、躑躅(つつじ)が赤・白・ピンクの花を咲かせ、非常に華やかです。
伊根湾と躑躅
 山の緑、海の青との色の取り合わせが、とても綺麗ですね。

 舟屋の里公園を後にして、国道178号線から少し東側へ逸れ、細い道路を北へ向かいます。これまで何度かご紹介しました、秦の徐福(じょふく)伝説や千枚田のある新井(にい)への道です。
 右側に、陽光に煌めく海が見えてきました。振り返りますと、伊根にかけて断崖が続いています。
伊根の断崖

 新井の海岸近くの棚田では、一面に水が張られています。これも晩春の風物詩ですね。
新井の棚田

 丹後半島を一周する国道178号線は、風景が大層美しいので有名な道路ですが、伊根の北では山中を通っています。
 お時間がありましたら、海側の道路を走ってみられても、丹後半島らしい美しい山海の眺望を、満喫できるのではないでしょうか。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.04.26 Sunday

磯砂山と天女伝説

 これまでに幾度か、私が登った丹後の山々をこのブログでご紹介してきましたが、最初に登った「磯砂山」(いさなごさん 661m)を、まだ取り上げておりませんでした。
 写真に春の花が写っているのが、その理由ですから、登山後1年を経て同じ季節が巡ってきた今、改めてご案内させていただきます。

 磯砂山は京丹後市の南部に聳える、羽衣天女が舞い降りたという伝説を持つ山です。
 全国各地にこの伝説が残されていますが、「丹後国風土記」には日本最古と言われる羽衣伝説が記されております。磯砂山の池で水浴びをする天女の羽衣を老夫婦が持ち帰り、天女は老夫婦の娘となって、酒造りで里を豊かにしたという物語です。
 また羽衣を持ち帰ったのが狩人で、天女を妻にしたものの、やがて天女は隠された羽衣を見つけ、天へ帰っていったという、別系統の物語も残されております。

 磯砂山に登るには、西麓を流れる鱒留川(ますどめがわ)に沿って遡り、南側の登山道を行くのが一般的です。
 車道の終点には駐車場もあり、そこへ自動車を置いて、登山道へ足を踏み入れます。始点に立つ標識によると、山頂までは1010段あるようです。
磯砂登山道
 登山道は思いのほか整備され、頂上までの残りの段数を示す標識が、随所に設けられていました。

 途中で、天女が水浴びしたとの伝説が残る池にも寄ってみました。但し池というより、窪地の水溜りという感じです。
 歩き始めてから、約40分で山頂に到着しました。
磯砂山頂
 山頂は広々とし、四方に展望が開けています。

 また、山頂には天女伝説のモニュメントが置かれていました。
天女の碑
 その傍らには、水仙の花が咲いています。
 
 山頂に半時間ばかりいて、下山を始めました。
下山道から
 登るときには気づかなかった周囲の様子が見えてきました。山の木々もようやく萌えてきたようです。

 下山して、鱒留川に沿って自動車を走らせ、北麓から振り返りますと、八重桜が咲く川岸の向こうに、今しがた登った磯砂山の姿が見えていました。
磯砂山と鱒留川

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.04.19 Sunday

丹後の躑躅

 桜に続いては、丹後の躑躅(つつじ)をご案内します。
 今日取り上げますのは、大輪の花を咲かせる大紫(おおむらさき=平戸ツツジの一種)ではなく、ヤマツツジや三つ葉ツツジです。

 与謝野町北部、京都府道2号線が兵庫県境の岩屋(いわや)峠へ向かう途中に、「雲岩(うんがん)公園」というヤマツツジの名所があります。
 鎌倉時代に寺院(雲厳寺)が開かれましたが、戦国の動乱に巻き込まれました。近世に再興された後、現在は公園となり、4月には5000本のヤマツツジが斜面を覆います。
雲岩公園
 標高130mの小高い尾根には巨岩が点在し、写真はそこから北東を眺めたものです。

 また、宮津湾東岸の高台に、「獅子崎(しいざき)稲荷神社」が鎮座しています。参道脇の斜面には1000本の三つ葉ツツジが群生し、毎年この時季、一斉に赤紫色の花を咲かせます。
獅子崎稲荷神社
 因みに、神社の建つ高台からの眺めは「雪舟観」(せっしゅうかん)と呼ばれ、雪舟の描いた国宝「天橋立図」の視点に一番近いとされております。

 三つ葉ツツジと言えば、久美浜の「如意寺」(にょいじ)も欠かせません。
 こちらは関西花の寺第7番札所で、四季折々の花を楽しむことができます。境内の遊歩道を歩きますと、三つ葉ツツジを間近で観賞することができます。
久美浜の如意寺
 花の向こうに、久美浜湾が見えていますね。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |

2009.04.12 Sunday

丹後の桜 〈2〉

 今日は天橋立・宮津を離れて、丹後半島、そして由良から舞鶴にかけての、桜の名所をご案内します。

 舟屋で有名な伊根から更に北へ進みますと、蒲入(かまにゅう)という漁港があります。
 丹後半島を巡る国道178号線は、漁港が見えてくるあたりで、道路の海側に桜並木が続きます。振り返れば、桜の合間から丹後半島の断崖が眺められました。
桜咲く蒲入

 丹後半島の先端・経ヶ岬(きょうがみさき)から、半島北岸を西進します。斜面に棚田が広がる袖志(そでし)を経て、ほどなく丹後松島(たんごまつしま)に着きました。
陽春の丹後松島
 陽春の日本海は波が穏やかです。海と桜は、実によく似合いますね。

 今度は、宮津から東へ向かい、北近畿タンゴ鉄道の丹後由良駅前まで来てみました。駅前の道の両側には、等間隔に植えられた桜の古木が、見事な花を咲かせています。
丹後由良駅前
 このような桜並木が京阪神になどあれば、見物客が殺到するでしょうに、当地では休日の昼間にも拘らず、ご覧のように、人影を殆ど見かけません。
 満開の桜を、正に独り占めでした。

 由良川を渡り、舞鶴市街へ入ります。舞鶴湾の西岸に、「吉田瑠璃寺」(よしだるりじ)という仏寺があり、そこの枝垂桜が立派で美しいのです。
吉田瑠璃寺
 戦国武将・細川幽斎が京都の吉田から桜を移し、以後この地が吉田と呼ばれるようになったそうです。

 丹後各地では、他にも美しい桜を多く見かけますが、都会と異なり、雑踏に揉まれて見物するということは殆どありません。
 暖かい日差しの中で、散りゆく桜花を静かに見ておりますと、日本の春の情緒とはこういうものかという思いがします。

Author : 天橋立ホテル | 春の丹後 |